ブラックナイロン弦は見た目よりも全然弾き易いですよ(高橋 竜)
ロトサウンドのブラックナイロン弦の弾き心地についてはいかがですか?
高橋:一つだけ声を大にして言いたいのが、絶対フラットワウンド弦より楽です。柔らかくて、弾くのも大変じゃないです。で、音もフラットワウンド弦より伸びます。
押さえ辛さなどはないですか?
高橋:割と柔らかいですよ。あと、フレットレス・ベースを弾いたらハーモニクスをスライドしたくなるじゃないですか、“トゥ~ン”と(笑)。それがフラットワウンド弦よりも簡単にできます。絶対こっち(ブラックナイロン弦)の方が難易度低いです。
テープワウンドの触り心地などはどうですか?
高橋:指に優しいですね。
ブラックナイロン弦の音の印象はどうでしょうか。
高橋:音は独特ですね。…あ、ただ一個だけブラックナイロン弦は大変なことがあって、張り替えてすぐはチューニングが合わないので、ライブの当日に張り替えるのは絶対に止めた方がいいです。5日から一週間は時間をおいた方がいいです。
ちゃんと馴染ませないといけないんですね。
高橋:そうですね。安定するまでちょっと時間が必要です。
そうですか…。ただ、そういった注意点はありつつも、基本的には弾き易い弦なんですね。
高橋:見た目よりも全然弾き易いですよ。
リッケンバッカーのベースにブラックナイロン弦を張ることで、得られるものはありますか?
高橋:リッケンバッカー自体もアタックが強いベースで、ブラックナイロン弦も割とアタック命の弦なので、アタック感を求めてわざわざアップライト・ベースを弾かなくても良くなったというのはありますね。この組み合わせでアップライト・ベース的な音も少し出せるので。アタックがバンッと出て伸びない感じが近いです。フラットワウンド弦でもアタックの強い音は出せるんですけど、フラット弦だとエレキ・ベースっていう感じになるんですよね。ブラックナイロン弦だとそうではなくて、ウッド・ベースみたいに“ズンッ”といって終わるような感じがちょっとあります。
ちなみにブラックナイロン弦はとても太いですが、ナットの加工などはどうされたんですか?
高橋:ナットは張っているうちにだんだん削れてきたのか、大丈夫になってしまいました(笑)。自分では加工も何もしていないです。だから最初のうちはペコンと外れたりしていたんですけど、だんだん削れてきたみたいで。
加工をしなくても張れるものなんですか?
高橋:張れたんですけど、決して合ってはいませんでしたし、その自覚もありました。ただ、最初はこのブラックナイロン弦をずっと使い続けるのかわからなかったので。削ってしまうともう後には引けないと思ったので、そのまま騙し騙し使っていたら、自然と大丈夫になりました。
IORI:そうですよね、チューニングしている間にもどんどん削れていきますもんね。
高橋:そうなんですよ。ただ、基本的には弦が乗っかっているだけの状態になるので、加工はした方が良いです。
では、このフレットレス・ベースはブラックナイロン弦の専用機になっているんですね。
高橋:今はもう完全になっています。
ステンレス弦を張ったベースとブラックナイロン弦を張ったベースを同じライブの中で持ち替えることはよくあるんですか?
高橋:あります。
弦の感じも全く違っていそうですが、持ち替えた際の違和感などはないんですか?
高橋:弾いた感じも、この2本はネックとかがほぼ一緒なので…。弦で違和感を感じることもそんなにないですね。
IORI:太さとかもそんなに気にならないですか?
高橋:太さは気にならないですね。
IORI:へぇ…、それは弦の素材感の違いもあるかもしれませんね。太さを感じる前に、感覚として素材感の違いの方が先に来ちゃうのはありそうです。
高橋:そうですね、太さの前にもっと違うものがあるっていう感じですね。
IORIさんにはステンレスのSwing Bass 66を愛用いただいていますが、他メーカーのステンレス弦を試したことはありますか?
IORI:他メーカーのステンレス弦は使ったことないですね…元々はニッケル弦がメインだったので。ロトサウンドも最初はSwing Bass 66のニッケル弦を使わせてもらっていて、その後ステンレスに変えた時に“全然音が違うな”と思ったんです。ニッケルよりステンレスの音の方が、自分的には好きだったっていう感じですね。
王道のニッケルからステンレスに至ったのは音の面が大きかったんですね。
IORI:音と、あとステンレスなら錆びにくいのかなって単純に思っちゃいましたね。で、やっぱりニッケル弦を使っていた時よりも、ステンレス弦の方が寿命が長い感じがします。生音で聴くと“音がだんだんへたってきたな”って思うんですけど、ロトサウンドはアンプを通せば“まだ全然いける”っていう期間が長い気がしますね。それもステンレス弦の方が長く感じます。
なるほど。ステンレス弦に変えて、音作りに関してはいかがですか?
IORI:自分の音作り的に、この弦の音の鳴り方が一番ちょうど良かったので、すごくやりやすくなりましたね。
例えば歪み系の音を作る際はどのように調整するのでしょうか? トレブルを足す形になるのでしょうか。
IORI:最近は逆にロー感を気にするようになりましたね。ブライト感がすごく出る弦なので。これまではドライヴを上げるとローが増す感じがあったのでトレブルを上げることが多かったんですけど、ロトサウンドにして音の土台が決まって、最近はトレブルよりローを足すことが多くなりました。ローを足しても埋もれない感じがあるので。
高橋:ロックの“やや歪みベーシスト”って結構いるじゃないですか。いつもちょっと歪んでる人、みたいな(笑)。そういう人達にもすごく合っていますよね。
IORI:そう思います(笑)。何も入れなくてもちょっとジャリッとしますもんね。
高橋:自然に歪んでくれる感じがあります。
IORI:そこまで歪ませたくない時も、ちょっとトーンを調整すれば前に出つつもロー感が足された音が得られて、すごく良いと思います。
IORIさんがメインで使用しているジャクソンのベースはブラス・ナットに変更されているそうですが、ロトサウンドの弦に合わせて改造されたんですか?
IORI:いや、それは違いますね。開放弦にアタック感が欲しかったので、ブラス・ナットに変えました。フレットを押さえて叩く音と開放弦を叩く音を同じにしたかったんです。でも、ロトサウンドのステンレス弦との相性も良いですね。開放弦を叩いてもジャリジャリしてくれるので。スラップに向いていると思います。自分的にはピックで弾くならジャリジャリした音の方が良いと思うので、ピック弾きにも合います。何にでも合うと思いますね。