Vigier V4ECC RRS MY
ヴィジェよりLOUDNESSのベーシスト、山下昌良のシグネチュア・モデルの第4弾となるV4ECC RRS MY “Red Rising Sun”が登場した。本機はこれまでのシグネチュア・モデルと同様にアルペジ・ベースの仕様を踏襲しながらも、デザインを一新。太陽のモチーフがボディー・トップ中央に配置され、ナチュラル&シースルー・レッドのカラーリングを採用し、ヘッドストックには「大和魂」の文字が入っている。
今回、なぜデザインが改められたのか。ニュー・シグネチュア・モデル“Red Rising Sun”に込められた想い、そして魅力を本人に直接語ってもらった。
一番言いたいのは、本当に全部同じ音がするんです
まず、山下さんがご自身で使用されるモデルの選定にあたり、完成した実機を試してみていかがでしたか?
前回のシグネチュア・モデル(V4ECC WRS MY)の時は、10本の中から自分で使うベースを1本選んだんですよね。その時はもう小さい音でしか鳴らしていなくて、ほぼルックスで選びました。ヴィジェは音が基本的に全部一緒で、個体差が本当にないんですよ。当たり外れがないんです。だから、音を鳴らさなくてもルックスだけで選んで持って帰っても良いかと思ってたんだけど、今回のシグネチュア・モデルの選定では1本だけすごく気になる音の鳴りがするベースがあったので、それを選びました。ただ、選んだベースのルックスは用意してもらった11本中、真ん中ら辺かな…。もっと綺麗なトラ目が出ているモデルがいっぱいあったんですけど。何回も弾き比べたけど、やっぱり音を選んでしまいました。まぁでも、本当に音はほぼ変わらないんです。プロでないとわからないレベルの違いなんだけど。いや、プロでもわからないかな、弾いている人にしかわからないと思います。
サウンドが一番良いモデルを選ばれたんですね。
今回はね。前回のホワイト・ライジング・サンの時は、実は2番目に良い音がするモデルを選んだんですよ。1番良い音がするモデルは泣く泣く諦めました。全く杢目が出ていなかったんですよ、一番良い音がするモデルには。
あぁ、なるほど…!
だからその時は2番目に音が良いモデルにしたんだけど、今回ルックスは4、5番目なんだけど俺に“弾いてくれ”っていう音がしていたから、それに決めました。ただ一番言いたいのは、本当に全部同じ音がするんです。それはすごいことなんですよ。他のメーカーではあり得ないことですから。やっぱり当たり外れがあるので。外れの確率も、普通のメーカーなら10本作ったら2、3本はあるんだろうけど、ヴィジェは全くないんでね。
では、当たりの中から使う1本を決められたのですね。
そうそう。だから極端なことを言うと、ほとんど変わらないのでルックスだけで決めて持って帰っても良いんです。そこがヴィジェのすごいところで、信頼しているところでもあります。前回のホワイト・ライジング・サンの時も、ちょうどアルバム(『SUNBURST~我武者羅』)の制作に入る前に使うモデルを選定して、その一か月以内にはもうアルバムのレコーディングで使っているからね。それぐらいすぐに鳴るベースなんです。
アルバムと言えば、最新の『SUNBURST~我武者羅』には「大和魂」という楽曲が収録されていますが、新しいシグネチュア・モデルのヘッドにも“大和魂”という言葉が入っていますね。
ちょうど『SUNBURST~我武者羅』のレコーディングをしている時に、この新しいシグネチュア・モデルの話をしていて。元々、いずれは太陽を真ん中に持ってくるデザインにしたいと思っていたんですよ。ただ、太陽を真ん中に持ってくる、それ即ち旭日旗になるじゃないですか。前までは太陽が下から登ってくる“ライジング・サン”な感じだったけど。だから、このデザインにはやっぱり“大和魂”と入れたいなと思いまして。「大和魂」という曲があったのでね。
『SUNBURST~我武者羅』のレコーディングをしている時に、今回のモデルの話が進んでいたのですね。
本当はアルバムが発売される頃にこのシグネチュア・モデルも完成する筈だったんです。ただ、コロナの影響で材料の確保に手間取ったりと何だかんだあり…。妥協を許さないパトリス・ヴィジェ社長が“全て良い材料を集めるまで作りません”ということで、遅れたんだけどさすがこだわっているだけあって、良いモデルが仕上がってきました。
そうだったんですね。
“大和魂”と入れたのはそういう訳で、当初はニュー・アルバムの発売と同時にニュー・ベースも出したいと思っていましたし、この「大和魂」という曲が一番キラー・チューンな感じだったので。そして何より、この模様には“大和魂”ですよ。
確かに…!
実は、一番最初にヴィジェで自分のシグネチュア・モデルを作ろうとなった時に、まずこの中央に太陽があるデザインで行こうと思っていたんだけど、あまりにも旭日旗でベタベタじゃないですか。だから、最初に作ったブラック・ライジング・サンは、旭日旗デザインでも黒だったらちょっとイメージが変わるかと思って黒にしました。で、下から太陽が昇ってきているようなデザインにしたんです。…本当はブラック・ライジング・サンの次にブルー・ライジング・サンを作った時、カラーをブルーかグリーンかどっちにしようか迷ったんですよ。それでボディー・カラーのサンプルを両方作ってもらったんです。そのサンプルは今も大事に持っているんだけど。だからブルー・ライジング・サンの後はグリーンも良いなぁと思ってたんだけど、白黒を作りたくて、この前は白黒のホワイト・ライジング・サンにしたんですね。で、次はそろそろグリーンかなとも思っていたんですけど、「大和魂」という楽曲もできましたし、いつかは旭日旗色の赤も作りたいと思っていたので赤にしました。それで、どうせ赤にするんだったらど真ん中に太陽を持って来ようと思って、このデザインにしました。
色ありきのデザインでもあるのですね。
そうですね。そして見てもらったらわかるんですけど、ヴィジェのベースの特徴としてボディーのフレイム・メイプル材の杢目がすごく綺麗じゃないですか。この杢目を生かした塗装にしたかったんですよ。前のホワイト・ライジング・サンは、白の部分の杢目が出にくかったんですね。だから今回ナチュラルにしました。でも、新しいモデルは赤の部分もすごく杢目が出ていますね。
綺麗に出ていますね! ちなみに、今回のレッド・ライジング・サンの製作に至った経緯は?
前回ホワイト・ライジング・サンを作って、そのままアルバムが出るのと同時にニュー・ベースも出したいなと思ったんです。何年か前から、最終的にはこの色とデザインで作りたいなと思っていたんですよね。ただ、先程も言ったようにグリーンも作りたかったんですけどね。でも、この(レッド・ライジング・サンの)デザインにしようと思いまして。アルバムもありましたしね。あとは、去年40周年ツアーだったんですけど、本当はそのツアーでも使いたかったんです。40周年というのもあったので、このニュー・ベースではデザインを今までと変えようと思いました。最終的にやりたかったのがこのデザインだったので、ここにドカンと持ってきたんです。
実際に仕上がったモデルをご覧いただいて、色の感じなどもご期待に沿うものでしたでしょうか?
期待通りです。毎回そうなんですけど、ヴィジェはカラー・サンプルを送ってきてくれるので。今回も赤が薄いものから濃いものまで、何種類か送ってくれて。それを見て、どれくらいの濃さの赤にするか決めました。ヴィジェの方からオススメも聞いてね。最初はもう少し濃い血みたいな赤にしようかなと思ってたんですけど、サンプル見て、濃い赤だとデザインがデザインなだけにちょっと…となり。採用した赤は明るめだから、なんかこう嫌らしさがないんですよね。
爽やかな赤ですよね。
それでこの色にしました。本当はもっと赤が濃い方が“ザ・旭日旗!”って感じなんだけど、ちょっと生々しいので止めました。
繊細なカラーリングなんですね。
そうなんです。だから、結構ヴィジェの方とは色のやり取りをしているんですよね。それで完成まで時間が掛かったのもあるんですけど。
弊社の担当者から製作工程のやり取りを少し見せてもらったのですが、色だけでなくデザイン案も当初いくつかあったんですよね?
何種類かありました。(完成形とは)全然違うデザインですとか、前までのシグネチュア・モデルに近いものもありましたね。
そうなんですね。では今回のデザイン面において、特にこだわったのはどういった部分でしょうか?
やっぱり杢目を出したかったですね。だから、当初のデザイン案の中には太陽から出ている光線がもっと太い案もあったんですけど、ナチュラルの部分の杢目が綺麗なので、それを出すために赤の線をそんなに太くしないようにしました。それと先程も言ったように、あまり濃い赤にすると生々しくなるのでポップな赤にしようかなって。
それもあって、太陽の丸も前までのデザインより小さめになっているんですね。
そうですね。杢目を目立たせたかったんです。カッコいいと思います。あとは“大和魂”の文字を指板に入れようかというアイデアもあったんですけど、それは技術的に無理だという話になりまして。ヘッドも赤にしようかというアイデアもあったんですよ。けどやっぱり杢目を目立たせたかったので。それにナチュラルにした方が高級感もあるかなって。
ナチュラルだと杢目も出ますしね。
実は白赤の組み合わせも考えていて、最後までどっちにするかめっちゃ悩んだんですよね。ただ白だと本当に旭日旗になってしまうのでね…。ナチュラルにすると嫌らしさがなくなりますよね。白にするとヴィジェの魅力である杢目も出にくいですし。