Talk Session ~ 菴-IORI- × 高橋 竜

ロトサウンドに変えてから、スラップの音の輪郭がしっかりするというか、そういう音が前に出てくる感覚があった(菴-IORI-)

 弦を選ぶ上で大事にしているポイントはどういったところにありますか?

高橋:触った感じなんですけど、ちょっとこれには恥ずかしい話があって。去年か一昨年ぐらいの話なんですけど、僕はその時点でもう何十年もロトサウンドを使い続けているんですよ。それなのにあるローディーさんとロトサウンドの話をしていたら、その方が“ロトサウンドって巻き弦を巻いている向きが(他メーカーと)反対なんですよね”って言っていて、心の中では“えっ、マジで!?”と思いながら“あぁ…そ、そうだよね”って言いましたが、“ヤバい、何十年も使っているのに今初めて知った!”と思いました(笑)。巻き弦の向きが反対なんですね。だから他メーカーの弦と触った感じが違うんだということを、その時初めて知りました。

IORI:やっぱりピックで弾く時にすごく“逆だな”っていうのを感じますね。引っ掛かりがあるなぁと思います。

高橋:なるほど。IORIさんの演奏をYouTubeで見せてもらったんですけど、割と2フィンガーで弾かれますよね?

IORI:そうですね、基本的には指で弾きます。あまりないのですが、レコーディングする時や曲によってドライヴ感を出したい時にはピックで弾くこともあるので、そういう時に引っ掛かりを感じます。…でも、その巻きが逆というのも、言われて“あ、そうなんだ”と思いましたけどね(笑)。

高橋:わからないですよね。

IORI:こういう弦なのかなと思いますよね。

 確かに…。では、IORIさんがロトサウンドに出会ったきっかけは?

IORI:自分には師匠がいるんですけど、その師匠が元々Swing Bass 66を使っていまして、それを師匠が弦を交換する機会やライブの音出しで弾いた時に、“すごく良いなぁ”と思っていました。このジャリッと感というか、そういう音がすごく自分に合うなぁと思ったので、たまに師匠から貰って使ったりしていたんです。そんな中で(神田商会に)声を掛けてもらって色々試させていただいて、ゲージを探したら45-100のSM66Dがあったので、使うようになりました。

 師匠のベースを触る機会は多かったんですか?

IORI:そうですね、多分日本で一番ロトサウンドの弦を交換しているんじゃないかなって思います(笑)。毎回ライブごとにベース3本の弦を交換するので。

 師匠からロトサウンドの弦を勧められることもあったんですか?

IORI:すごく言われましたね。このロトサウンドの弦に変えてから、スラップとかの音の輪郭がしっかりするというか、そういう音がすごく前に出てくる感覚があったので“やっぱりこの弦良いね”みたいな話をしていて。一緒に試しながら弾いていたら、“やっぱり良いなぁ”と。勧められました。

 ありがたいです! さて、ここからはお二人にそれぞれ愛用いただいているモデルについて、お伺いしていきたいと思います。まず高橋さんにメインで使っていただいているビリー・シーン・モデルについて、43/65/80/110という独特のゲージを採用していますが、一般的なゲージと比べてどのように感じますか?

高橋:若い頃イギリスに行った時に、当時日本で売っていなかったメーカーの弦を見つけて、試してみようと思って買って帰ったことがあったんですよ。そこの店員さんに“普段何使ってるの?”って聞かれたので“ロトサウンド”と答えたら、“ロトサウンドの方が良いよ”なんて言われながら(笑)。そうして買ってきたイギリスの弦を張ってみたら、その弦は3弦が80じゃなくて85で、太かったんです。その時に改めて、ロトサウンドって3弦が細いんだなって思いました。3弦が太いとすごく違和感を感じたので、この3弦が細いこともミソなんだと思いました。IORIさんも3弦は80ですもんね。

IORI:そうですね、80です。でも、(ビリー・シーン・モデルの)4弦の110から3弦の80は落差がありますよね。

高橋:ありますね。でも慣れちゃいました。ジャズベも持っているんですけど、そのジャズベにもビリー・シーン・モデルを張っているので。

IORI:ビリー・シーン・モデルって、僕が使っているSM66D(45/65/80/100)とは1弦と4弦のゲージが違うだけですね。真ん中は一緒ですし。

 素材も同じステンレスですからね。

高橋:本当だ。IORIさんは4弦はわざと細めを使っているんですか?

IORI:そうですね。最初にロトサウンドを使い始めた時は4弦が105だったんですけど、105を張った時にネックの負担を感じたのと、弾いた時に太いなって思っちゃって。元々100というゲージに慣れていたのもあって、それでSM66Dにしましたね。だから(ビリー・シーン・モデルの)4弦110は太いなと思いますね…。

高橋:フレットレス・ベースに張っているブラックナイロン弦(RS88LD)もゲージが65/75/100/115なので、数字だけ見るとめちゃめちゃ太いんですよね(笑)。触った感じはそんなことないんですけど。

 ブラックナイロン弦を張ったフレットレス・ベースは、どういった現場でよく使われるんですか?

高橋:アコギのセッションで、ベースは入るけどドラムは入らないような時ってあるじゃないですか。そういう時に、このブラックナイロン弦のフレットレス・ベースを重宝していますね。ただ、ドラムが入ったバンド・アンサンブルの中でも楽曲によって必要な時には使うので、意外とフレットレス・ベースの出番は多かったりします。

 ブラックナイロン弦を使っているベーシストはどちらかと言えば珍しいですよね。

高橋:僕はブラックナイロン弦を使うことへのハードルが元々低かったんですけど、どうしてかと言うと、一番最初に買ったベースがフレッシャーというブランドのヴァイオリン・ベースで、それにブラックナイロン弦が張ってあったんですよ。だから、一番最初に触れたのがブラックナイロン弦だったんです。

 そうだったんですね! 最初にヴァイオリン・ベースを手にしたのはやはり、ポール・マッカートニーが好きだからですか?

高橋:そうですね。ポール・マッカートニーがブラックナイロン弦を使っていたので。

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