中音域がしっかり出る分、歌が乗せやすいと言われます(菴-IORI-)
ところで、IORIさんは最初はロトサウンドのニッケル弦を使っていただいていたということですが、そちらにはどのような印象を持たれましたか?
IORI:ロトサウンドは全体的に中音域がすごく出る感じがあるので、他のメーカーのニッケル弦を使っていた時より音が前に来るイメージがありました。あと、Swing Bass 66のニッケル弦は飾り糸が水色なんですよ。自分のベースも青なので、それもすごく良くて使っていました。良いニッケル弦だと思います。中音域が前に出るので、アンサンブルの中でも音がちょっと前に来ますね。ステンレス弦も含めて、ロトサウンドは中音域のパワー感が強いと思います。スラップするとすごくわかるんですけど、ハイだけが出ちゃうんじゃなくて、ちゃんと芯のある音が出るんです。
この他にもロトサウンドの弦を試していただいたことはありますか?
IORI:シグネチャー・モデル以外はほとんど試しましたね。
その中で印象に残っているモデルはありますか?
IORI:ブラックのコーティング弦のNexus Bassが面白かったですね。飾り糸も赤、青、黄色、緑の4色あって(笑)。
高橋:良いですね!
IORI:黒いヘッドだとすごく目立って良いんですよね。弦自体も黒いので、メイプル指板のベースだとすごく映えますし。ただ、良かったんですけど、4弦の105のゲージに慣れなくて…。
コーティング弦ですが、触り心地などはいかがでしたか?
IORI:他社のコーティング弦と比べて、ロトサウンドの独特のザラザラ感がしっかり残っているのが面白いと思いました。他のコーティング弦って、そこまでツルツルというわけではないですけど、やっぱりスルッと滑るというか。悪くはないんですけど、ガッツリ弾いている感がなくなるんですよ。Nexus Bassはそれがしっかり残っていて、かつブライト感も他のコーティング弦よりある印象でした。ゲージが合えば良かったんですけど(笑)。
IORIさんはLarme Belladonnaの他にも、サポートやレコーディングなどあらゆる現場で活躍されているかと思いますが、いずれの現場でもロトサウンドの弦を使っていただいていますか?
IORI:基本的にはずっとこれ(SM66D)ですね。自分の音作りの好み的に、歪ませてハイ寄りな音で作るので、それにすごくピッタリ合うなっていう感じです。今まではハイ寄りに作っちゃうから中音域が出せなくて…。ロー感は出そうと思えばいくらでも出せるじゃないですか。だけど一番欲しいところの中域の音が出せなかったのが、ロトサウンドは程よく出してくれるんです。
では、色々な現場で広く使える弦でしょうか…?
IORI:すごく使いやすいですね。中音域がしっかり出る分、歌が乗せやすいと言われます。アンサンブルする分にはロー感だけでも良いんですけど、中音域がなくなると音が見えてこなくなっちゃうんですよね。そうなるとボーカルが歌いにくいっていうのはあると思うんですけど、それがしっかり聴こえてくると言われるので。ボーカリストや、あとPAさんにもそれを言われますね。“音がすごく見やすくなった”と。
歌ものの音楽にも合うんですね。
IORI:そうですね…ましてや激しい曲が多いバンドだと、これくらい中音域がしっかり出る方がボーカリストは歌いやすいのかなと思います。
お二人ともステンレスの弦を愛用いただいていますが、ステンレス弦は手触りなどが気になる人もいるかと思います。その点はどうですか?
IORI:周りでステンレス弦を使ったことがある人の中には、あの滑らない感じというかザラザラ感が得意じゃないと言う人もいますけど、この手触りに慣れちゃうとこっちの方が“弾いているな”って感じがしますね。高橋さんは弦を交換した時、潤滑スプレーとか塗ったりしていますか?
高橋:いや、塗っていないです。塗っていますか?
IORI:塗らないと怖いですね(笑)。
高橋:確かに、交換したばかりの時に少し痛い時がありますね。
IORI:最初この弦に慣れていない時に、ツアー中に指の皮が全部剥けてしまったことがあって…。3日間連続で20曲くらい演奏するっていう内容で全国を回っていたんですけど、初日は水ぶくれになって、次の日にはもう指の皮がベロベロに剥けちゃって。でも、もう慣れましたね。慣れると逆に、この弦じゃないと弾いている感覚がないんですよね。柔らか過ぎちゃって。
高橋:わかります、その感じ。
IORI:なので、そこさえ乗り越えれば、もうこれしかないって思います。
高橋さんはどうですか?
高橋:僕がベースを始めた頃はインターネットもないですし、情報のない世の中だったので(笑)。ステンレスがニッケルと比べて少数派だということもわかっていなかったんですね。ただ、ロトサウンドと言えばステンレスという認識はあって。余談ですが、ベースを始めた当時、グレコのベースを買うと付いてきたゴダイゴのベーシストのスティーヴ・フォックスさんの教則カセットで練習していたんですけど、その中でスティーヴさんが“クリス・スクワイアはマキノアライ弦を使っています”と言っていたんですよ。その“マキノアライ弦”というのは、どうやらラウンドワウンドの“巻きが荒い弦”という意味だったみたいで、当時それがわからなくて“マキノアライ”っていうブランドがあるのかと思っていて(笑)。そんな時代から使い続けているので、ステンレス弦の感触が普通になっていますね。
IORI:でも、自分はロトサウンドを使っている師匠がいたり、勧められたりしてこの弦に辿り着いた感じがあるんですけど、高橋さんは自ら辿り着いたんですね。
高橋:まぁ、そうですね(笑)。当時は雑誌で情報を集めたりして。最初はポール・マッカートニーの影響でフラットワウンド弦を張っていたんですけど、“なんかクリス・スクワイアの音にならないな…”と思っていたんです。“そうか、マキノアライ弦か!”と思って色んな人に聞いてみたら、“それはきっとラウンドワウンドだと思うよ”って言われて、そうしてロトサウンドの弦に辿り着いて張ってみたら“これだ!”となりましたよ(笑)。