Interview ~ 中村梅雀【後編】

ZEMAITIS & Rotosound

 ベーシストとしても活躍する俳優の中村梅雀。彼のためにZEMAITISで製作されたシグネチュア・ベースBaijaku Nakamura “BJ” modelの完成に際し、行ったインタビューの続きをお届けしよう(前編はこちら)。

 前編ではZEMAITISとの出会いから工場見学などのエピソード、シグネチュア・モデルのデザインに込められた想いを伺ったが、後編ではより一層細かくこだわりの部分を掘り下げつつシグネチュア・モデルの魅力、さらには彼がエンドーサーを務めるRotosoundの弦に関することまで、広く話を訊いた。

中村梅雀

できあがった実物のヘッドを見たら、まぁなんと素敵な…!

 オリジナル・デザインはもちろん、前編でお話に挙がったボディーのコンター加工など随所に特別な仕様が施されていますが、他にもこだわった点は?

 どうしても僕の頭の中で鳴っているのが60~62年までのJBの音なので、あの34インチのスケールとあのナットの狭さ、あとリア・ピックアップの位置がちょっとネック寄りっていう当時の“あの”位置じゃないと嫌だっていうのがあって。あとはやっぱりジャコ・パストリアスが大好きなので、ZEMAITISでもジャコの曲を演りたいと思っていて、最低限ジャコのような音が出てほしいというのがあったんです。なので、リアのピックアップがジャコのベースと同じ位置にあるというのがどうしてもの条件でした。だからリア・ピックアップがその位置にあるんです。

 リア・ピックアップの位置は絶対の条件だったんですね。

 絶対です。あと、ピックアップはセイモア・ダンカンのWeather Report Setを載せてほしいと頼みました。このセットは試したことがなかったんですけど。そして配線は絶対にパッシブで。“プリアンプを載せましょうか?”という話もあったんですけど、僕がずっとやってきた中でプリアンプは最終的に使わなくなってしまったんです。あと、プリアンプのあるものはプリアンプに合わせたピックアップになっているので、結局パッシブにした時の音が弱いんです。音の補助ばかりを考えていると言いますか。やっぱりパッシブで良い音が出るベースが一番抜けが良いという根底の考え方が僕の中にあって、パッシブで良いものは最強だという意識だったので、パッシブにこだわりました。
 あとは、ボディーと弦の隙間の間隔があんまり開き過ぎていると、指が入り過ぎて弾きにくい。だから、できればピックガードが付いている状態のJBに近い方が良いかなっていうことは伝えたと思います。とは言えジャコのベースはピックガードを取ってしまっていて、その隙間に指を入れちゃっているので、まぁそちらでも良いかなぁと(笑)。とにかく、できあがってから調整すれば良いやと考えていましたね。
 それと、パールフロントのボディーにはパールフロントのヘッドという組み合わせが元々あったんですけど、“いや待てよ? それだとカタログ通りだな”と思ったんです。何かオリジナリティが欲しいなと。せっかくボディーのパールフロントがBJオリジナル・デザインになったんだから、何かないかなと考えた時にフッと思い出したのが、山内テツさんでした。そういえば、山内テツさんのZEMAITISのベースのヘッドって、特殊だったよな…と。

 そこからあのヘッドのアイデアが…!

 それで色々調べたら、山内テツさんが持っていたものと同じ見た目のベースを弾いている動画があったんです。弾いているのはベーシストでコレクターの方だったのかな? 誰のベースとは言っていなかったですけど、とにかくZEMAITISのベースだというのを紹介していて。そのベースはシングル・カッタウェイにメタルフロントで、Pピックアップがスラントして載っていてテイルピース付き、ネックがホンジュラス・マホガニーで、そしてヘッドがエボニー貼りのあの独特の形だったんです。“なんじゃこれ、家具みたい!”ってずっと頭に残っていて、“これだ!”と思いました。その動画を一時停止してアップにして、“これです! これを再現してください!”って送りました(笑)。
 その後候補として、ボディーのBJのデザインが何種類か来たのと同時に、ヘッドもパールフロント・ヘッドと再現をお願いしたヘッドの両方のデザイン・パターンをデータで送っていただきました。候補のデザインを見ていったら、一番最後にちょっと隠し文字のようになっているBJデザインのデータがあって。僕は外側のアバロン・リングのデザインが好きだったので、アバロン・リングが輪郭に沿って入っていて、真ん中にBJの隠し文字があるデザインにしようと。で、ヘッドはあのデザインにしてもらったというわけです。

 なるほど、そうしてあの形状のヘッドとオリジナル・デザインのパールフロントの組み合わせになったんですね。

 資料として送った動画も時々ヘッドが映る程度だったので、これを再現できるのかなぁというのがあったんですけど、できあがった実物のヘッドを見たら、まぁなんと素敵な…!っていう。びっくりしましたね。

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