Interview ~ 中村梅雀【前編】

メタルフロントのあの形とあの音で大成功だったなと思っています

 ありがとうございます! ところで初めて神田商会にいらっしゃった時は、Rotosoundの話をするためにお越しくださったんでしたよね?

 そう、本題はRotosoundの弦の話だったんですよね。その時はなんとなくジャコ・パストリアスのベース(※中村はジャコ・パストリアスを敬愛しており、彼が実際に使用していたベースを所有している)を持って来ていたので、“持って来ましたよ~”なんて言ってお見せしたりしました。神田商会のスタッフの方からはその時すでに、“ZEMAITISで何か作ってみないか”というお話もいただいていたので、“でしたらそちらに伺った際にアイデアを交換しましょう”と伝えて当日はRotosoundの話のついでにシグネチュア・ベースの話もしました。ジャコのベースともう1本ベースを持って来ていたので、その場で簡単な採寸はしてもらいましたね。そしてその時に初めてZEMAITISのベースを弾きました。メタルフロントのベースを2種類弾いたんですが、面白~いと。ピックアップがPタイプとJJタイプの2種類だったんですが、Pタイプの方は僕の音楽に使えるのかわからず(笑)、とりあえずJJタイプのピックアップのモデルが良いなぁと思って家に持ち帰って、散々試し弾きしてそこからアイデアを引き出しました。で、Pタイプの方もどうしても気になったので“また使いたい”って言って、実際にライブでも使わせてもらいました。PスタイルのB22MT DCPはすごく特殊な音だったので“特殊な使い方しかできないな”と思っていたんですけど、使っているうちに段々わかってきたんです。
 それである時、僕が主演している「今野敏サスペンス 機捜235」シリーズの「今野敏サスペンス 機捜235×強行犯係 樋口顕」というドラマのプロデューサーから、“劇中でベースを弾いているシーンを入れちゃいますけど、良いですか?”と言われたんですよ。“何でベースを弾くの!?”っていう話ですよね(笑)。聞くと、警察(※中村梅雀演じる主人公・縞長省一は警察官)が青少年の犯罪を防ぐために、みんなで平和に音楽をやろうよっていう警鐘としてYouTubeにベースを弾いている動画を上げるという設定のワンシーンで、弾いてほしいということでした。僕が演じる縞長という巡査部長が、なぜかいつものスーツ姿で直立不動でベースを弾いているんだということで、“良いじゃないですか”と言われて“やりましょう”と快諾したんです。その時にパッと浮かんだのが“そうだ、スーツ着て生真面目な縞長巡査があのメタルフロントのB22MT DCPを弾いたら…しかもバックの見えるところにGALLIEN-KRUEGERのアンプを置いて、DODのEnvelope Filter 440を掛けてビャオ~ンという音を出しながらスラップをやりまくれば…絶対見る人にインパクトを与えるな”っていう。しかもそれはドラマ内で手持ちのスマホ動画としてしか登場しないという設定だったので、とにかくインパクトだと思って、ZEMAITISのベースを使ってその動画を撮ったわけですよ。で、それが若者の間でバズっているというドラマのストーリーだったんですけど、“実際に中村梅雀自身がそれをInstagramで上げたらどうなるんだろう?”と思って、その動画をInstagramのリールで上げてみたんです。実際のドラマで使われた動画は著作権の関係で上げられないので、共演者の平岡祐太くんに撮ってもらった動画を僕のInstagramで投稿してみたら、14万以上の「いいね」が付いてすごいことになっちゃって(笑)。ドラマが本当になったぞ、みたいな。

 その投稿拝見しました。本当にバズっていましたね! しかも、海外の方からも「いいね」やコメントがたくさん来ていましたよね。

 そうそう。僕も色んな人のInstagramをフォローしているんだけど、その時マイケル・リーグがフォロー返ししてくれたんです。“嘘ぉ!?”と思って“僕、アナタの大ファンです! アナタが来日した時はブルーノート東京の公演を観に行きました!”って送ったら“繋がって良かった、梅雀”って返ってきたんですよ。もうびっくりで。

 そんなことがあったんですね…!

 そうなんです。やっぱりメタルフロントのあの形とあの音で大成功だったなと思っています。B22MT DCPはそういう使い方がバッチリですよね。それでもって今回、オーダーして作っていただいたBaijaku Nakamura “BJ” modelですが、想像以上に時間が掛かりましたね(笑)。

 確か昨年のゴールデンウィークに始動しましたよね。

 そう、去年のゴールデンウィークに始まりました。原案を決定してデザインも決めて、それを担当の方に渡したんですが“順番待ちなので…”と言われて、多分誰かのオーダーやシグネチュア・モデルが進行中なんだろうなと思っていたら、その通りだったんだけど(笑)。“まぁ年内に間に合わなくても急ぐもんじゃないし、とにかく良いものができたらそれで僕は大満足です”とは伝えつつも、“年内のライブで使えないかな?”なんて思っていたら、年内は間に合わず。“来年で良いですよ”って言っているうちに、テレビ番組でZEMAITIS工場を見学できる機会が訪れたんです。「遠くへ行きたい」という旅番組なんですけど、その番組のディレクターの一人にすごくベース好きな人がいて、その人が僕に話を振ってきたんですよ。“50年以上続いている旅番組があるんですけど、その中でベース絡みの旅をしませんか?”という話で。それを聞いた時、すぐに岐阜にあるZEMAITISの工場が思い浮かんだんです。ちょうど製作中の僕のベースがありますよ~!って(笑)。

 ナイス・タイミングですね(笑)!

 ナイスですよ。撮影がベースの製作時期に間に合ったら最高じゃないですかっていう話をして。で、そのディレクターと会って色々話してみたら、なんとそのディレクターが売りに出したベースを僕が買っていたことがあったんですよ。

 それはすごい偶然ですね!

 “梅雀さん、あのベース持っていましたよね? あれ元々僕が持っていたベースなんですよ”って言われて“えぇ~!”って。ディレクターとはそんな話で盛り上がりました。そうして「遠くへ行きたい」という番組で、ZEMAITISの工場に行けることになったんです。実はそのディレクターも行き先のメインは工場見学(笑)。そしてディレクターも僕と同じで、木目・木材フェチで、ベース・フェチなんです。だもんでもう、本当に興味津々でした。4時間くらいいたのかな? ディレクターもストップって言わないでずーっとカメラを回しっ放しだし、“あそこも撮っておこう”って言って結局(放送で)使っていないのが何時間もあるんですよ。

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